小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第23話 分岐点(五)
声がした方を見ると、よく映える赤い服の女が立っていた。神谷と一緒にいた、リリーという女だ。 「あなた、神谷と戦った…。ずいぶん荒れてるみたいね」 リリーは整った顔に笑みを浮かべながら、あてつける様に俺が蹴飛ばしたゴミ箱を見た。そして俺の着慣れていないスーツ姿を一瞥し、 「就職活動中なのね。まあ、あなたはパチプロには向かないものね。私達の世界へは来ない方がいいわ」 そう言われてまたカッと熱くなった。(また俺を馬鹿にする!)以前、乾に「もう二度と会うことはないだろう」と言われたのを思い出していた。 「言われてなくても、バクチ打ちになんかなるつもりはない!あの後、俺は…クソッ!」 苛つく俺を、リリーは微笑んだまま見つめていた。俺は今までの鬱憤をぶちまけ続けた。 「あんなの、運だけじゃないか。神谷って男も運が良かっただけだろ!」 そう言うと、リリーはにわかに眉をしかめ、不快な表情になった。 「言いたいのはそれだけ?」

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