小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-] |
「よせ、リリ-…」
神谷と言う車椅子に座った痩身銀髪の男は、目を閉じたまましわがれた、それでいて威厳のある声で言った。
「私は相手が誰であろうと、全力で戦う…それだけだ…」
リリ-と呼ばれた女は美しい顔を曇らせて不満げだったが、その時
「皆さんお揃いのようですね」
不意に大きなよく通る声が店内に響いた。店長らしき男が現れ、続けた。
「それでは、依頼人藤原氏と小川氏のパチンコ代打ち勝負を開始します」
店内の男達は歓声を上げ、「神谷に3つ!」「こっちは神谷に7つだ!」と口々に叫び始めた。どうやらヤジ馬達がこの勝負に便乗して賭けをしているらしい。皆が神谷にばかり賭けるので胴元らしい男が「椎名ないかっ!?」と怒鳴るが、さすがに無名の俺に張るヤツはいない。胴元が困っていると入り口近くの壁際から声が飛んできた。
「椎名に70!」
皆の視線の先には着古した茶色の革ジャン姿の男が、不敵に笑いながら立っていた。