小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第16話 後始末(一)
俺は商店街を歩いていた。歩いてはいたが、かかとが地に着かず、現実感が無かった。
気が着くと半開きの口から涎が垂れていた。自分がどこへ行こうとしているのか、どうすればいいのか、何を考えればいいのか?それどころか、今どんな気持ちになればいいのか?それすら分からず、ただ、爪先だけで商店街を歩いていた。月の湯という銭湯の手前辺りで、後ろから幾つかの足音が駆けてきた。
不意に背中を押され、よろめく間もなく無理やり路地裏に引き入れられ、力まかせに突き飛ばされた。俺はうつ伏せに倒れこみ、地面をなめた。恐る恐る仰向けになり、倒れたまま目玉を動かして辺りを見ると、肩を震わせた、鬼の様な形相の男達に取り囲まれているのが分かった。
「おいガキ!よくもあんな無様な負け方をしてくれたなッ?!」
そう叫ぶと、男達は一斉に俺を蹴り始めた。頭を抱え、体を丸めて耐えているのが精一杯だった。何度も腹を蹴られているうちに、自分の意思とは無関係に小便が漏れ始めた。男達の怒りは収まりそうになかった。

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