小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第29話 勝負の構造(一)
乾に聞いた話では、パチンコ勝負は打ちっ子(パチプロ)とマッチメーカー(勝負の取り仕切り役)、そしてパチプロに大枚を張る張り手(パトロン)がいて成り立っているらしい。張り手は前回の勝負で俺や神谷に張っていた野次馬とは別で、パチプロを勝負の場に立たせるためにまとまったコマ(金や担保)を用意しなければならないらしい。あの勝負の場合、青い服のマシュマロ野郎・藤原が、銀髪痩身のパチプロ神谷の張り手であり、桜子が俺の張り手だったと言うことになる。(今頃こんな事を整理している自分が恥ずかしい)桜子は不当に取り上げられていた工場を取り戻すために、改めて工場を賭けさせられ、俺の惨敗により"正式"に工場を取り上げられたのだ。俺が、あの藤原に工場を賭けさせて勝負するには、俺に張ってくれるパトロンが必要だと言う。乾は俺が打ち続けて作った百両を受け取ると、「よし、お前の張り手を見つけてやるよ」とだけ言って店を出て行った。騙されているような気がしないでもなかったが、他に桜子の工場を取り戻す方法が浮かばない以上、乾に頼るしかなかった。

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