小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第39話 洗礼(一)
八原川を渡り、川沿いを歩いて商店街に抜ける路地に入った。両側を民家に挟まれた細い道だ。その通路の中ほどに差し掛かった時、商店街がある前方に人影が見えた。俺はあまり気に留めなかったが、近づくにつれその人影がどこか見覚えのある顔だということがわかった。確か…、前回の勝負後、俺を袋叩きにした一団にいた男だ。俺は緊張したが、表情に出さないように狭い通路をすれ違おうとした。その時、強く肩を掴まれ強引に振り向かされた。俺の背後にばらばらと三人の男達が現れ、さらに商店街の方からも通りを気にしながら男が近づいてきた。俺の肩を掴んでいる男が凄みのある声で言った。 「おい!懲りずに勝負するんだってな。オマエがパチプロなんて十年早ええんだよ!」 間髪いれず別の男に背中を蹴飛ばされ、俺は前のめりに路地に突っ伏した。他の男達もよってたかって俺を蹴り始めた。「おらあッ!二度とパチンコを打てなくしてやるゥ!」男の中の誰かがそう叫び、俺の右手の指を踵で地面にねじり込み始めた。

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