小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第28話 きっかけ(四)
プレハブの中は薄暗く、パチンコ台の灯りが眩しく浮かび上がっている。見るからに無許可の店だとわかる。こんな貧弱な建物に台がまともに設置できるものだろうか?怪しげな店内の様子に見入っていると声をかけられた。 「よっ、確かオマエ、椎名とか言ったな。こんなところに何か用か?」 「い、乾!。いや乾さん。あんたを探してたんだ!」 「俺を?」 怪訝そうな乾に、夕暮れの繁華街でリリーに教えられた『桜子の工場を取り戻すためにしなければならないこと』を話した。『パチンコを打ち続け、百両作る』『それができたら、塚内町にいる乾を訪ねる』―俺が話している間、乾は長椅子でタバコをくわえたまま、顔をシマの方へ向け、口元に性質(タチ)の悪そうな笑みを浮かべていた。(こいつ、俺の話を聞いているのか?)話をひと通り終えると、こともなげに乾が言った。 「わかった。場は用意してやろう」 「ありがとう。助かるよ」 「礼におよばんよ。そのかわり、俺の出す条件を呑んでもらうがな」

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