小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-] |
そんなことを思い出しながら歩いていると、やがて「銀玉会館」の前に着いた。桜子に頼まれたパチンコ勝負は引き受けることにした。どうして引き受けたのかはよく覚えていないが…。今の自分から変われるかもしれないと思ったような気もする。
俺はパチンコを打ったこともなければ、パチンコ屋に入ったことすらなかった。さすがに不安になって、勝負の会場であるこの店に下見に来たのだ。学校の勉強では予習復習なんてしたこともなかったが、こういうことに限ってマメな自分が少し可笑しかった。
意を決して店に入る。思っていたよりは狭い。手持ちの金も少なく、打ち方も分からないので、しばらくは他の客の様子を見ることにした。しかし挙動不審に見えるのか、店員や客がしきりに俺を見ているような気がする。どうにも気まずくなってきたので、比較的人の良さそうなおっさんの横に座り、見よう見まねで打ち始めた。