小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-] |
車椅子の神谷は、リリーに押されて、シマの中ほどの台に着いた。俺は神谷から右側に一つ間を空けた台に座った。昨日打っていた台だ。桜子が俺の右後ろに立つ。俺は恐る恐る左側にいる神谷の様子をうかがった。神谷は目を閉じたまま、うつむいている。俺のことなど、全く気にしていない様子だ。その後ろには、赤いスーツの女、リリーが腰のくびれを強調するように片方の脚に体重を乗せ、腕組みをしながら微笑を浮かべている。美しい顔だ。ウェイブのかかった金色の髪を肩まで伸ばし、真っ赤な口紅に赤いスーツ。短いタイトスカートからのぞく脚は、男ばかりの店内で圧倒的な存在感を誇示している。見とれている俺に気がつくと、リリーは余裕ありげな表情でウィンクをよこし、神谷の方に向き直った。俺は振り返り桜子の顔を見た。桜子は目に涙を溜めて俺の顔を見つめ返した。その時店長が、「勝負開始!」と声を張り上げた。
俺は弾かれるように前に向き直り、ハンドルを握った。