小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第20話 分岐点(二)
「パチンコ勝負なんて、もうまっぴらだ!」
俺は布団の中で、やり場のない怒りに震えていた。掛け布団を力任せに跳ね除け、引き裂かんばかりに当たり散らした。しかし八つ当たりすればするほど自分が惨めに思えた。「クソッ!」血が昇った頭で、あの勝負の日に会ったヤツらのことを思い出した。勝手に俺に金を張り、負けたからといって袋叩きにした男達。乾とか言う得体の知れない革ジャンの男。趣味の悪い青いス-ツの色白マシュマロ野郎、藤原。
気取った銀髪痩身、車椅子のパチプロ、神谷。
そしてその女秘書リリ-。…ふと、彼女の赤いミニのタイトスカ-トから伸びる白い太腿を思い出した。はっと我に返り、頭を振った。
「もう、あんなヤツらのことは忘れよう。元々俺には関係ないことだ…」
パチンコ勝負が今までの無為な生き方を変えてくれるなんて、馬鹿げた妄想に過ぎない…。また俺は中途半端なことをしてしまった。(とにかく仕事に就かなければ!)。そう決意すると、寝床から這い出し、流し台の蛇口から、空きっ腹にたらふく水を流し込んだ。

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