小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-] |
「なんだ!まだガキじゃないか!」
店に入った俺の姿を見て、ヤジを飛ばす男達。その中で桜子は一際小さく見える。ヤジを浴びながら桜子の前に行くと彼女は消え入りそうな声でつぶやいた。
「椎名君、来てくれたんだね…」
桜子の傍にいる青い背広を着た色白の男が、俺を値踏みするように見た後、
「おや、どんな凄腕が来るかと思ったら、こんな若造が…。これでは、私が依頼した先生には、到底勝てるはずがありませんよ」
桜子を脅すように言った。男は口元をいやらしく歪ませてさらに続けた。
「どうやら、あの工場は私のモノになったも同然ですね!ホッホッホッ」
最後は小指を立てて笑い出した。桜子は、うつむいて聞いていたが、突然顔を上げ、俺の手をとると、覚悟を決めたような目をしてささやいた。
「みんなの言うことなんて気にしないで、お願いね」
その時入り口の方がどよめいた。
「神谷が来たぞ!」