小説 [パチプロ風雲録 -青春篇-]
作・椎名銀次

第17話 後始末(二)
「空」と言うものは青以外の何ものでもないはずだが、なぜだか今は黄色く見えている。俺は路上で大の字になりながら、ついさっきまで参戦していたパチンコ勝負のことを思い出していた。前半俺は四回の当たりを引き、神谷を大きく引き離していた。はずだった。しかしある時点を境に俺には全く当たりが来なくなり、それまで音なしだった神谷に、怒涛のように当たりの波が押し寄せたのだ。結局は、ツいてなかったってことか…。でもそれにしては、形勢が逆転するタイミングがあまりにもはっきりしている…。仰向けのままそんなことを考えていると、頭の傍で人の気配がした。 「こんな所で寝ていやがったのか!」
頭の上に茶色の革ジャンの男が立っている。確か…「乾」と呼ばれていた男だ。勝負の前、皆が神谷にばかり張っている中、最初にこの男が俺に張ってきた。それを機に、皆が一斉に俺に張り始めたのだ。ということは、この乾と言う男も大損したに違いない。さっき俺のせいで負けた男達に袋叩きに遭ったことを思い出し、俺は身を固くした。

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